『毒笑小説』

毒笑小説 (集英社文庫)

毒笑小説 (集英社文庫)

東野圭吾さんの作品です。
『怪笑小説』『毒笑小説』『黒笑小説』で三部作になっているようですね。
このシリーズ、本格推理小説を書いているひがぴょんが、笑いに重点を置いて書いたらしく、ブラックなお笑い短編がほとんどです。
私は「誘拐天国」が好きでした。
3人の大富豪のおじいさん達が、塾や習い事で遊ぶ暇のない孫のことを心配して、ゆっくり遊ばせてやろうと狂言誘拐をしてしまうお話になっています。
それから、「本格推理関連グッズ鑑定ショー」は『名探偵の掟』収録のある短編と繋がっています。
まさか、他の本で名探偵の推理を覆す大業をやってしまうとは、ひがぴょん格好いい。←棒読み


しかし、この本の最大の価値は、最後に収録されている京極夏彦氏との対談なのです!
今を代表する作家2人による対談ですよ!
しかも、テーマが「お笑い」。
京極夏彦と言えば、『姑獲鳥の夏』から始まる京極堂シリーズを代表として、非常に格調高い妖怪小説を書いていらっしゃいます。
ひがぴょんだって、もうすぐ映画が公開される『容疑者Xの献身』で直木賞を取るくらいの、人気推理小説家です。
この2人が対談するのに、よりにもよってテーマが「お笑い」。
これには訳がありまして、京極夏彦氏、当時*1小説すばる」でおすもうさんをテーマに短編を書いていたのですね。
その作品群は、後に『どすこい。』というタイトルで1冊の本にまとめられるのですが、それを書くにあたって、ひがぴょんの書いた「超たぬき理論」という短編*2に勇気を貰ったとのことでした。
ちなみに、どすこい。はこちら↓

どすこい。 (集英社文庫)

どすこい。 (集英社文庫)

有名作品を全ておすもうさんで塗り尽くすという恐ろしいことをやっているパロディ本です。
私はこの本で京極氏を見る目が変わりました。
個人的には『すべてがデブになる』がお薦めです。
ていうか、この本を読んだおかげで、小野不由実さんの『屍鬼*3』を読破してしまいました。
話が少々おすもうさん方面に逸れてしまいましたが、とにかくミステリ界の重鎮2人が、「小説界ではお笑いの地位が低い」とか「お笑いを書くときにはかなり気力を使う」とか「お笑いはしらけと紙一重」とか色々と語っています。
そこで、ひがぴょんがぽろっと「実は『秘密』*4には秘密がある」という話をいたしまして、それがなかなかぶっ飛んだ内容だったのです。
ある意味、「ガリレオのモデルは佐野史郎」並みの衝撃でした。
気になる方は是非読んでみてください。

*1:98年くらいか?

*2:『怪笑小説』収録

*3:『どすこい。』では「脂鬼」

*4:娘の身体に妻の魂が宿ってしまった夫の物語。けっこう感動長編