『航路』

航路(上)

航路(下)

コニー・ウィリスさんのSFです。
彼女の作品は、今まで『犬は勘定に入れません』と『ドゥームズデイブック』しか読んだことがないのですが、とにかくはずれがないです。
上記2作品は、近未来のケンブリッジ大学史学部を舞台にした、タイムスリップSFミステリィなのですが、かなり長い作品なのに、物語の進め方が非常に上手で、あっという間に読んでしまいました。
犬は勘定に入れません』では爆笑し、『ドゥームズデイブック』では、号泣してしまったし。
訳者である大森望氏が「コニー・ウィリスアメリカの宮部みゆきだ」とおっしゃっていますが、私も同感です。
とにかく、ストーリーテリング力が尋常じゃないのですよ。

『航路』は、やはりSFなのですが、舞台はアメリカの病院で、臨死体験をメインテーマにしています。
主人公のジョアンナ(認知心理学者)とリチャード(神経内科医)は、臨死体験を科学的に解明しようとして、ジテタミン(架空の薬物)を使い、人工的に臨死体験状況を作り出す実験を行うのですが……。
適当な被験者がなかなか見つからず、ジョアンナ自らが被験者となることに。
彼女が臨死体験で「潜った」先で見た物が、これまた突拍子もないものでして。
8年程前に公開され、アカデミー賞を11部門も受賞した某映画*1の舞台となった「例のやつ」だったのです(←これで分かるか?)。
彼女は、臨死体験と「例のやつ」との関連を探してかけずり回るのですが、それが分かりそうで分からない。
まず、「臨死体験は向こう側からのメッセージである」と主張し、『トンネルの向こうの光』という臨死体験本を出した、どっからどう見てもインチキそうなベストセラ作家ミスター・マンドレイクが行く手に立ちふさがり、お喋りでどうしようもない退役軍人のミスター・ウォジャコフスキーは関係ないことを喋りまくり、何回も臨死体験をしたことがあって災害マニアのメイジーという少女の話に付き合わされ、謎を解く鍵を握っていそうなジョアンナの高校時代の英語教師であるブライアン先生はアルツハイマーで昔の記憶をすっかり失っている、といった具合。
この、メチャメチャな状況は、『犬は勘定に入れません』でも活用されていましたが、もどかしくてもどかしくて、ページをめくる手がとまらないのですよね。

そして、ついにジョアンナは謎を突き止めるのですが、そこからいきなり予想もしない急展開で……。
大変なことになってしまいます。
そして、最後は感動のラストを迎える、と。

とにかく、コニー・ウィリスさんの作品は全て当たりなので、面白いSFを探している人は、是非読んでみる事をお薦めします。
私は特に『犬勘』が好きです。
ティーフになった『ボートの三人男』も読んじゃったくらい。

*1:若気の至りで、この作品に主演したL・D氏に少々いかれてしまった時期もありました