『帝都衛星軌道』

帝都衛星軌道

島田荘司氏の作品。
御手洗さんが出てくるか？と期待して読むも、期待はずれで登場せず。
しかし、中身はとても面白かったです。
表題作の「帝都衛星軌道」が前編と後編に分かれていて、間に「ジャングルの虫たち」という中編が入っている、という変則的スタイル。
わざわざ間に挟んだのだから、２つの作品の間に何か関連があるのかしら？と思ったのですが、私が急いで読んだ限りでは、確かに「ジャングル」の舞台設定は「帝都」後編を読むためにそれなりの効果を上げているとは思うけれど、関連性は薄いと思われます。
というか、ほとんどミステリィ的要素がなくて社会派っぽい「ジャングル」は、あまり得意な分野ではなくてですね……。
正直、飛ばして「帝都」後編に行っちゃおうかと何度思ったことか。
もちろん、島田荘司氏の書いた物語ですから、読めば面白いんですよ。

「帝都衛星軌道」の方は、最初は何の変哲もない営利目的誘拐かと思われた事件が、身代金受け渡しあたりから謎が多くなっていき、物語は意外な展開を見せ、最後は事件の背後に過去の事件の意外な真相が浮かび上がってくる、という島田マジック炸裂の良くできたお話でした。
タイトルにもきちんと意味があって、非常に秀逸です。
某Ｈ野氏にも、これくらいのタイトルセンスがあれば……以下略。