『リベルタスの寓話』

リベルタスの寓話

リベルタスの寓話

島田荘司氏の作品。
御手洗潔ものだとあっては、スルーできず、図書館から借りてきました。
表題作の『リベルタスの寓話』と『クロアチア人の手』の中編2本立てとなっています。

どちらも、旧ユーゴスラビアの民族問題に端を発する殺人事件を扱っていますが、『リベルタスの寓話』はクロアチア、『クロアチア人の手』は日本が舞台となっています。
私は日本人で、日本国内においては(在日の方やアイヌ民族琉球民族の方々の問題はありますが)武力を用いた民族紛争なんてないし、何故あれほどまでお互いに憎み合わなければならないのか理解が出来ませんが、ああいう紛争地帯の人たちは、本当に大変だなと思いました。
ナショナリズムを単純に否定はしませんが、行きすぎたナショナリズムは危険ですね。
それだけ、世界が豊かになってきた証拠かも知れませんが。


リベルタスの方は記録係がハインリッヒで、石岡君が出てこないと何だかつまらないな*1と思っていたら、次の中編で石岡君が出てきて、少しだけ嬉しかったです。
高校時代から御手洗潔シリーズを読んでいるせいか、石岡君が出てくると、ほっとします。
どちらの作品も、島田氏の得意とする一見猟奇的な事件だけれど、きちんと合理的な理由がある、という作品でした。
色々と力業でやってしまっても、読んでいて何となく納得してしまえるところは、さすがの筆力です。
もう、文句のつけようがありません。

個人的には、もうちょっと御手洗さんと石岡君の馬車道時代の物語が読んでみたいな、と思う今日この頃です。
最近の作品では、御手洗さんはずっとスウェーデンに行っていて、日本が舞台の事件では電話のみの出演*2なので、少し物足りないのです。

*1:私はどちらかというとミタライアンで、カズミストではないのだが

*2:外国が舞台の作品だと、ハインリッヒが記録係になる