『チャイナ・タウン』

チャイナタウン (創元推理文庫)

チャイナタウン (創元推理文庫)

S・J・ローザン氏の作品。
ニューヨークを舞台に、28歳の中国系移民リディア・チンと、中年の白人男性ビル・スミスという2人の探偵が活躍する推理小説です。
シリーズ化されていて、現在、7作目くらいまで日本語訳が出ているのでしょうか?
主人公に中国系移民の女性探偵を持ってきた、という点で非常に珍しいですが、それ以上に、視点人物がリディアとビルの交互になっているところが、とても面白いです。
視点人物を交互に入れ替えることで、作品の雰囲気もガラリと変わるし、入ってくる情報も変わるため、2人がお互いに知らないことを読者が知っていることになりますから。

本作品の視点人物は、リディア。
中国系ということもあって、舞台はニューヨークのチャイナ・タウン。
チャイナ・タウンにある美術館で、最近寄付された磁器が盗まれます。
その磁器を取り戻すことを依頼されたリディアは、早速調査に乗り出すのですが、マフィアは出てくるわ、お節介な兄は邪魔をするわで、調査は大苦戦。
そのうち、殺人事件も絡んできて……というお話です。


チャイナ・タウンという場所の特性が、事件の発展にも謎解きにもきちんと活かされていて、とても良いです。
同じアジア系という気持ちがあるせいか、登場人物が欧米人だけの小説よりも、共感するところが多いような気がします。*1
家族同士の繋がりとか、面子を守らなければならないとか、誉められたら謙遜するところとか、日本との共通点が多いせいでしょうか。
そして、リディアのお母さんが作る料理や、リディアが要所要所で飲むお茶が、とても美味しそう!
食いしん坊な私は、それだけで満足してしまいます。
相棒のビルとの、気の利いた会話もGood。
彼が視点人物の巻は、もっとハードボイルドな雰囲気になるようですね。
一方のリディアが視点人物だと、彼女はハードボイルドな雰囲気を出そうと頑張っているのに、周りが邪魔してアットホームな印象になってしまいがちです。
もちろん、それも作品の面白さに一役買っていて、結果オーライなのですが。


続編も読みたいのですが、レベル的には「古本屋で見つけたら買うレベル」ですね。
新刊では、ちょっと……。
翻訳小説って、妙に高いので。

*1:書いているのは、白人さんですが。