『小袖日記』

小袖日記

小袖日記

柴田よしきさんの作品です。
会社の上司と不倫をしていたのに、奥さんが妊娠したからという理由で振られ、自暴自棄になった主人公の女性が、何故か平安時代を生きる小袖という女性の頭の中にタイムスリップしてしまい、源氏物語を執筆中の紫式部(香子さま)の助手をする、というお話です。
設定からいくとSFなのでしょうが、タイムスリップの謎がクローズアップされる訳ではありません。
紫式部が小説を書くために、小袖が色々とネタを集め、そこで事件に巻き込まれたりなんだりして、源氏物語の裏にはこんなことがあったのですよ、と新しい解釈を加える、いわばパスティーシュのような作りになっています。
取り上げられるのは「夕顔」「末摘花」「葵」「明石」「若紫」の5編です。


この本は、とにかく女性に読んで貰いたいです。
主人公は現代人なので、平安時代の「通い婚」という結婚習慣や、男性の好きなように弄ばれるしかない女性の弱い立場に疑問を覚える訳です。
そんな主人公に、香子さまはきっぱりと「わたしの書く物語の中では、男のひとたちにも苦しみを感じていただきます。そして、愛に対する責任も最後まで果たしていただくつもりです」と言い、実際に源氏物語を執筆してゆくのです。


私は、夕顔と2人の男性貴族との関係について、主人公が心の中でつぶやく台詞がとても印象に残りました。
「千年経ったって、二千年経ったって、なんにも変わらへん!男にとって、女は人出はなく、物、なのだ。譲ったり譲られたり、所有したり捨てたり、平気でできる、物、なのだ」というもの。
最近は、男女は平等だという考えが主流と言われていますが、心の中ではこういう風に考えている男性もそれなりにいるのではw?