『インシテミル』
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/08/30
- メディア: 単行本
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米澤穂信さんの作品。
去年出版されて、各方面で評判が高かったので、前から読んでみたかった本です。
一応、本格ミステリ(を愛情をもって茶化すお話)になるのかな?
主人公を含む12人の男女は、求人雑誌に応募して、山奥にある地下空間「暗鬼館」*1で7日間を過ごすことになります。
その報酬は、破格の時給11万2千円。
しかも、条件によっては報酬が3倍になったりするボーナス付き。
目的は人文科学的実験につき、24時間フル監視が条件。
怪しすぎます。
もちろん、ただ閉鎖空間でのほほんと過ごせる訳もなく、暗鬼館に閉じこめられた主人公達を待っていたのは、12体のインディアン人形。
そして、ついに予定調和的に事件が起き……。
といった内容でした。
まず、暗鬼館という屋敷が出てきた時点で私が連想したのは、館シリーズby綾辻行人。
インディアン人形が出てきた時点で私が連想したのは、『そして誰もいなくなった』。
いかにも特徴のない、殺されるためだけに存在するような登場人物達。*2
でもみんな一癖も二癖もある感じ。
といった感じで、古き良き本格ミステリの様式をこれでもか!と踏襲しています。
それなのに、何かが違うんですね。
おなじみの展開で、仲間割れやら犯人当てやらが始まり、少し状況が変わるのですが、そこで今まで起きていた出来事が一気に解体されて、そのくだりは最近の本っぽいなぁ、と思いました。
最後の決着の付け方も、いかにも現代風。*3
色々と突っ込みどころ満載ですが、突っ込みどころがなければ本格ミステリではない、といっても過言ではないような気もします。
何故巨額の報酬を支払ってまで、そんな七面倒くさい実験をするのか全然意味が分からないです。
暗鬼館も、絶対に消防法に違反しています。
主犯格の参加者が、何故そんな困った事態に陥ったのか気になります。
それでも、それが本格ミステリだからいいのだ!と思える力が、本書にはあります。
久しぶりにいいミステリを読みました。