『文学少女と神に臨む作家(下)』

ついに読んでしまいました、"文学少女"シリーズ最終巻です。
上巻に引き続き、モティーフはジッドの『狭き門』です。
本編で少し紹介されますが、ジッドはとんでもない人間です。
言い換えれば、そういう変な人じゃないと、人々の記憶に残るような作品が書けないのでしょうか……?
既に上巻がどこで終わったのか忘れてしまいましたが(笑)、意外とすんなり物語の中に入って行くことが出来ました。


前作から少しずつ明らかになってきた遠子先輩の出生の謎ですが、ついに本作で、全てが解決されます。
今まではずっと探偵役だった遠子先輩ですが、今回は心葉くんが探偵役に。
いままでずっと、女性陣に守られてばかりで、少し情けなかった心葉くんですが、遠子先輩の両親とただならぬ確執があったとされる、ベストセラー作家にして流人くんの母親である櫻庭叫子と対決したり、遠子先輩を追って新幹線に飛び乗ったり、大活躍で、ちょっとだけ見直してしまいました。


心葉くんの決死のアタックで最後に明らかになる真相は、相変わらずヘヴィで、ああ、人間は依存する生き物なのだな、と実感させられてしまいました。
人間、多かれ少なかれ、何かに依存して生きています。
その対象が人間だという人もいれば、組織の人も、物の人もいます。
本作品の登場人物達は、お互いに依存し合って、結局は悲劇を迎えてしまいました。
そんな負のスパイラルが招いた事件の真相を乗り越えて、物語が辿り着いた場所とは?
そして、彼らが選んだそれぞれの道、「狭き門」は、どこに通じているのか?
それは、本作を読んでのお楽しみ、ということで。
最後の心葉くんは、かなり格好良かったですよ。
まさか、そんな形であの伏線を回収するとは!


どうでもいい話ですが、遠子先輩の誕生日が、私と同じでした。
あと、彼女が進学した大学も、私と同じところのような気が(汗)
ああ、私も、華奢で古典的な美少女に生まれたかったなぁ。
そんでもって、心葉くんのような可愛い後輩と青春ドラマしたかったなぁ。
いや、青春ドラマは面倒だ、などと読み終わってから一人不毛なことを考えてしまいました。


"文学少女"シリーズ、内容はヘヴィな作品ばかりですが、主役2人がほのぼのキャラで和むし、古典作品が分かりやすく紹介されているし、イラストは可愛いし、読後感は悪くないし、
是非とも青少年の皆様に読んでいただきたい作品です。