『ホノカアボーイ』

ホノカアボーイ (幻冬舎文庫)

ホノカアボーイ (幻冬舎文庫)

大学卒業記念に、両親と一緒にハワイを訪れた主人公が、ドライブの休憩に偶然立ち寄ったホノカアという小さな町で、ひょんなことから映写技師として働くことに……。
本作は、その時の彼の体験を綴った物語です。
ホノカアは、ハワイ島にある小さな村ですが、1人の日系人・タニモトが建てた古い映画館があります。
その映画館・ホノカアシアターは現在、村のお医者さん・通称ドクターがタニモトの子孫から譲り受けて経営しています。
何故か2階にお風呂があったり、ドクターが9歳の娘にピアノの稽古を付けたり、平日はポップコーンが売っていなかったり、アットホームというか、かなりゆる〜い感じ。
さすがハワイです。
そんなホノカアを彩る人々が、とても魅力的に描かれていました。
映画館の経営者・ドクターをはじめ、その娘のエヴィアン、映写技師の先輩バズさん、車を貸してくれたカオリさん、ハワイを訪れるきっかけとなった本の作者ニックさんetc……。
そんな中でもとくに、主人公の食事の世話をしてくれた84歳になる日系人のおばあちゃん、ビーさんが、本当に凄いのです!
黒猫のブラッキーと一緒に暮らし、テレビが大好きな、現役の裁縫師さんです。
彼女が作る料理がどれも美味しそうで、読んでいて涎が出そうになりました。
しかも、彼女、某リゾートホテルで働いていた頃、ヒッチコックと友達だったとか!
人生哲学も素敵で、こんな可愛いおばあちゃんが近くにいたら、周りの人も幸せになりますよ。


人物だけではありません。
著者が描く、ホノルル等の観光地じゃない、ロコのハワイの姿もまた、本当に魅力的でした。
宝くじで1等当てたら、すぐに仕事を辞めてホノカアに行ってやる!と私に決意させたくらい。
やっぱり、南の島はいいです。
ホノカアには沢山の人種がいて、彼らが自然に共存している姿にも好感が持てます。
ああいう所は、下手に観光開発されたり、白人の町になったりせずに、ずっとそのままであって欲しい……。
そう、切に願います。

ところで、主人公の友達は本当にプロレス結婚式を挙げたのでしょうか?→実はそれが一番気になっていたり。