『虚栄の肖像』

虚栄の肖像

北森鴻さんの作品です。
『深淵のガランス』に登場した、花師兼絵画修復師である左月恭一が主人公の、ミステリ連作短編集になります。
もう、北森さんについては、言うことなしです。
アートとミステリの融合という、非常に限られた分野について言えば、私の中では彼の右に出る者はいません。
特に、芸術という「美しい面」と、それを扱う人間の「醜い面」の書き方が見事です。
素晴らしい美術品を巡る人間ドラマ、そして駆け引きの応酬。
たまりません。

本シリーズについていえば、主人公の左月恭一にはいまいち感情移入出来ないのですが（だってスタンスがハードボイルドっぽい気がするのです）、脇役の皆様が非常に豪華です。
そして実は、別シリーズの某女史も、左月の仕事の依頼人としてちょくちょく登場するのです。
彼女の密かなファンである私にとっては、嬉しい限り。
北森鴻さん、カメオ出演が意外とお好きなようですね。

このシリーズも良いけれど、やっぱり蓮丈那智シリーズと冬狐堂シリーズの新作を読みたいです……。
彼の作品については、女性主人公の方が好きみたいです。