『蔵書まるごと消失事件』『アマチュア手品師失踪事件』

蔵書まるごと消失事件 (移動図書館貸出記録1) (創元推理文庫)

蔵書まるごと消失事件 (移動図書館貸出記録1) (創元推理文庫)

アマチュア手品師失踪事件 (移動図書館貸出記録2) (創元推理文庫)

アマチュア手品師失踪事件 (移動図書館貸出記録2) (創元推理文庫)

移動図書館貸出記録」と副題のついたシリーズものです。
舞台は、イギリス……といっても、北アイルランドのタムドラムという小さな街(はっきり言って田舎)。
主人公は、29歳の冴えない司書の青年です。
ひょんなことから、この町の図書館司書として採用された主人公ですが、長旅の末に辿り着いた図書館は、閉鎖されていました。
その代わり、移動図書館サービスを始めるとのことでしたが、肝心の蔵書が丸ごと無くなっていて……というのが、第1作の『蔵書まるごと消失事件』です。
蔵書も無事見つかり、晴れて移動図書館司書となった主人公。タムドラムにある唯一絶対の百貨店「ディクソン&ピカリング」の記念展示を準備中に、百貨店の経営者が失踪し、金庫に入っていた売上金が盗まれてしまいます。しかも、何故か犯人として疑われたのは主人公で……というのが、第2作の『アマチュア手品師失踪事件』です。

このシリーズ、何が新しいって、主人公のキャラ設定です。
イスラエルという名前のユダヤ人(29歳、♂)で、小太りなのに菜食主義者。はっきり言って、全然冴えないです。
推理小説にありがちな、少し影のある格好いい探偵では全くありません。
更に、舞台となるタムドラムに住む住人達も、一筋縄ではいかない人たちばかりです。
言動が、どうもズレていて的はずれなのです。
特に激しいのが、主人公の相棒的な存在である、タクシー運転手のテッド。
第2作の後半では、主人公と2人で失踪した百貨店経営者の行方を追う珍道中を繰り広げるのですが、それがかなりの勢いで面白かったです。
どちらの作品も、ミステリ的要素はかなり薄いですが、それを凌駕する登場人物達のズレたやり取りに、要注目ですね。