『毒草師』

毒草師

毒草師

例によって、図書館から借りてきて読みました。
この本は、高田崇史さんの「QEDシリーズ」にも出てくる、自称毒草師こと御名形史紋が探偵役です。
彼の隣人である、医学関係の雑誌の編集者、西田の視点で物語は語られます。
この西田くん、テンションがちょっとぴい君っぽいかも……。

鬼田山家という旧家で、「一つ目の鬼を見た」という言葉を残し、離れから人が消える事件が相次ぎます。
何故かその謎を解くことになった西田が、隣人である御名形史紋と同僚の篠原朝美の助けを借りつつ、事件の真相に迫っていきます。
そこで、重要なモティーフとして出てくるのが、「一つ目の鬼」と「伊勢物語」。
「一つ目の鬼」については、以前のQEDシリーズで何度か語られたことがあったと思いまが、まあそのままです。
伊勢物語」については、教科書にも載っている、男が女を連れて逃げてあばら屋で一夜を明かしたものの、朝になったら女は鬼に食べられてしまっていた、という有名な「鬼一口」のくだりの解釈、そして「世の中にたえて桜のなかりせば……」という和歌の解釈が印象的でした。
桜の歌については、前にどこかで読んだことがあったような気もしますが……。

「一つ目の鬼の謎」も「密室状態の離れから人が消えてしまった謎」も、きちんと科学的な証明がなされるし、それなりに納得できる結末でした。
人間関係の錯綜っぷりに、ちょっと横溝正史テイストが入っていなくもないですが。
これは、人にお勧めできるレベルだと思います。