『イニシエーション・ラブ』〜騙される快感

イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)

イニシエーション・ラブ (ミステリー・リーグ)

乾くるみさんでした。

単刀直入にこの本の感想を言いますと……。
騙された!
この感覚、けっこう久しぶりかも知れません。
最初は、ごく普通のラブストーリィなのです。
舞台は静岡。
物語は、大きく分けて「A面」と「B面」に分かれています。
大学4年生である主人公のたっくんは、合コンでまゆと出会い、順調に愛を育みます。
そこまでがA面です。
しかし、たっくんが東京で働き初めてから、二人にすれ違いが多くなっていき、たっくんには東京で気になる相手も出来、二人の関係は一体どうなるのか?……というのが、B面です。


何度も言いますが、こんな感じで、ほぼ最後まで普通のラブストーリィなんです。
あれ?これって、ミステリーリーグだよね?ただの恋愛小説じゃないよね?と思いながら読み進んでいくと、最後の最後、本当に最後の数行で、世界がひっくり返ります。
これと同じような手法を使っている小説としては、(ネタバレにつき反転)我孫子武丸さんの「殺戮に至る病」とか歌野晶午さんの「葉桜の季節に君を想うということ」などが挙げられます。
まあ、そういうトリックな訳です。
特に、我孫子さんの方は良かったな……。
あの本を読み終わったときは、鳥肌が立ちました。
ちょっと話がそれましたが、とにかく、物語の構造を理解してからパラパラと読み返してみると、伏線があるわあるわ。
最初に読んだときに、ちらっと違和感を感じた事(これも多少ネタバレにつき注釈)*1も、全てが綺麗に回収されます。
ていうか、こんな所にまで伏線があったのか!と驚くことしきり。


この本は、読んで良かった!
こういう構造の本を書こうと思いついた乾くるみさんの頭脳に脱帽です。

*1:主人公の愛称がちょっと無理のある「たっくん」だったり、水着の模様だったり、まゆの体調が悪くなった理由だったり、まゆの部屋にある本だったり