『夏への扉』

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

前から面白そうだと思っていたのですが、たまたま、他の作家の本を探していてこの本を見つけ、運命を感じて借りてしまいました。

実際に読んでみると、約30年も前に発行された本だとは思えないくらい面白かったです。
いわゆるタイムトラベルSFなのですが、主人公は冷凍睡眠と非合法のタイムマシンを利用して、自分の会社をだまし取った人間に復讐をします。
その語り口が、なかなかコミカルで、非常に面白い。
古い本って、文体が古くさくて読みづらかったりするのですが、そういう弊害も全くない。
主人公の飼い猫ピートも良い味出しています。

物語においては、主人公が生きているのが1970年で、冷凍睡眠で30年後の2000年に行くのですが、1970年の時点で冷凍睡眠の会社があって家政婦ロボットが商品化されている(主人公が発明者だったりする)、と考えると、この物語の世界は現実よりもずっと進歩していることになります。
2000年の世界も色々と凄かったし。
需要がないので絶対に売れない自動車を、適当に作って解体する(そして主人公がそのことを責めると、みんなが労働者の仕事を取り上げるのか、と逆ギレする)展開は、近い将来現実のものになりそうで、ちょっと怖いです。
ニューディールの究極の形ですよね。


でも、日々の生活は格段に便利になっている訳で、少しだけそういう世界に行ってみたい、と思ったのでした。