『銀河不動産の超越』

銀河不動産の超越

銀河不動産の超越

森博嗣さんの作品です。
「省エネ青年」である主人公が、銀河不動産という零細不動産屋に就職し、そこで色々と変わったお客さんにあってどんどん人生が変わってゆく、というお話です。
この主人公の青年、どうも他人と思えませんでした。
何しろ、小説の始まりの言葉が「毎日が気怠い」から始まるのです。
更に、「周囲の人間を観察すると、何故みんなこんなに元気なのだろう、と感心する。エネルギッシュに動き回って、友達どうしでおしゃべりをし、大袈裟に笑い、また大声で怒鳴ったりもする。私には、そんな元気がないのだ。」と続きます。
私も、基本的にテンションが低くて気力がない人間なので、彼の考えには賛同せざるを得ません。
もちろん、彼ほど極端ではありませんが。


さて、そんな高橋青年ですが、仕事を通じて何故か変な家に住むことになり、その家になりゆきで変な人たちを居候させるはめになり、最後には色々と凄いことになってしまいます。
詳しくは本編を読んでいただくとして、色々と凄い展開にかなり感心してしまったのでした。
もうずっと前に読んだので、ディティールは忘れてしまいましたが、星新一さんのショートショートで、「悪いことをするためのカモフラージュとして真面目に会社勤めをして、チャンスを伺っている内に出世してしまい、最後には社長にまでなってしまう」というお話があったのですが、それを連想しました。
たぶん、文庫落ちしても買うことはないと思いますが、これは読む価値があると思います。


それにしても、森博嗣さんの書くお話も、初期のS&Mシリーズの頃と比べると随分とライトになったというか、ミステリィ色が薄くなったというか。
たぶん、そういう時代なのでしょう。
私も最近はすっかりキャラ萌え読書人生だし(遠い目)。
ヤンデレもカワイイと思えるようになってきた自分は、もう終わりだと思います。