『螺鈿迷宮(上)(下)』

螺鈿迷宮 上 (角川文庫)

螺鈿迷宮 上 (角川文庫)

螺鈿迷宮 下 (角川文庫)

螺鈿迷宮 下 (角川文庫)

海堂尊さんの作品です。
チーム・バチスタの栄光』『ナイチンゲールの沈黙』と同じ桜宮市が舞台ですが、病院はいつもの東城大付属病院ではなく、桜宮病院です。
主役も、いつもの不定愁訴外来・田口先生ではなく、東城大医学部の落ちこぼれ学生・天馬大吉です。
彼は、幼なじみの新聞記者の依頼で、終末期医療に力を入れているという桜宮病院にボランティアとして潜入します。
ところが、その病院、患者が社員として螺鈿細工を売る会社の仕事をしていたり、他の患者の食事を作ったり病院の掃除をしていたりして、どうも様子がおかしい。
病院の副院長・桜宮すみれに、新たな終末期医療のモデルを試しているのだ、と説明を受けて、一応納得する天馬。
しかし、三階にある特別室が見るからに怪しいのです。
移された患者は、必ずといっていいほど次の日には亡くなり、解剖され、その日のうちに火葬されます。
特に、天馬がボランティアに入ってからは、毎日のように死者が出ていて、いくら終末期の患者が多いとしても、不自然な死が多すぎます。
果たして、桜宮病院の抱える闇とは?
そして、不可解な現象の真相は如何に?といった内容でした。


今度は、そんなわけで、終末期医療の抱える問題を取り上げています。
もちろん、著者が提唱するAI(オートプシー・イメージング)も、院長の趣味(?)として、しっかり出てきます。
今回私が一番嬉しかったのは、前2作に白鳥の部下として名前だけ出てきた「氷姫」こと姫宮嬢が登場したことです。
しかも、ドジなメガネっ娘ナースです(嬉)
このラノベ的なキャラ、どうしてくれましょう。
彼女は、期待を裏切らずに存分に活躍して、そのおかげで主人公の天馬大吉はとんでもない目に合います。


天馬君の語り口が、妙に修飾語とキャッチフレーズが多くて、文章がくどくて読みづらかったのですが、まあ、許容範囲かと思います。
でも、個人的には、田口先生のシリーズの方が好きです。