裏金はどうして生まれるのか?

11月18日付けのMORI LOG ACADEMYにて、私が公的機関の裏金*1について漠然と思っていたことが、非常に分かりやすく書いてありました。
さすが元国立大学助教授の作家さんです。

以下、モリログより転載です。
注:強調部分は私の仕業です。

【社会】 裏金物語
 たとえば、夫が奥さんに対して、1カ月5万円の生活費を渡すとする。これは、ほかのことに転用してはいけないお金である。奥さんは、切りつめて5万円以下でやりくりをすると、翌月の予算が削られると恐れ、ぎりぎり5万円を使う。だから月末には、きっちりになるように、細かい買いものをすることになる。
 しかし、買おうと思っていたものが急に品切れになって、来月まで買えないことになった。かわりのものを買っても良いが、それは無駄遣いになるし、このままでは、お金が余ってしまう。だから、店にお金を先払いして、領収書だけをもらった。来月それが発売になったら買えば良い。領収書さえ見せれば、夫は納得してくれる。現物があるかないかなんて、夫にはわからないのだ。結果的に、これがうまくいったことで、奥さんは気を良くする。
 それまで、お金をきっちり使うことに苦慮していたけれど、この方法をあみ出したおかげで、せっせと節約をし、余った分をこの店に渡して、貯金することができるようになった。大変融通が利くし、無駄なものを買わずにすむので嬉しい。毎月、架空の領収書を作ってもらうわけだが、申し訳ないので、1割は手数料で店の取り分にしてもらうことにした。
 その店の商品以外でも、ストックしたお金を使いたい場合がある。そうなると、お金を店から返してもらわないといけない。手数料を少しはずんで、うまくやりくりをすることにした。
 毎月使われるお金は、領収だけを見ている夫には、常に5万円ちょうどである。家計簿上も、常に予算と支出は一致していて、明朗会計だ。しかも、奥さんは自由になるお金を持っているから、なにかと便利だし、また、そのお金は必ず生活費に使っているから、夫に対しても悪いことをしている意識はない。
 何故裏金が悪いことなのか、まだ当事者の多くは理解していない。誰も損をしていないどころか、節約にもなっている。こんな素晴らしいシステムが、何故文句を言われるのか?

森博嗣さんは、裏金問題を家庭に置き換えて、分かりやすく、かなり皮肉っぽく書いていらっしゃいますが、俗に言う公的機関の裏金は、こういった過程を経て作られています。
ここで特に問題となるのは、強調したとおり、「切りつめてやりくりすると、翌年の予算が削られる恐れがある」ということなのです。
頑張って節約したら、来年度からは使えるお金が減ってしまうのです。
一体、誰が頑張って節約するでしょう?
多少余分なものを買ってでも、予算ぎりぎりまでお金を使って、来年もせめて同じ額の予算が欲しい、と思うのが人情ではありませんか?
別に、無駄遣いをしたい訳ではないのです。
たまたま今年は使わなかったけれど、来年はどうしても買わなければならない高価なものが出てくるかも知れないので、その分の予算をできるだけ確保したいだけなのです。
役人は現状維持が一番好きなので、黙ってると予算が減らされることが明らかであれば、みんな断固として予算獲得に力を入れますよ。

もう1つの問題点は、予算の仕組みです。
地方公共団体は、毎年、今くらいの時期に来年度(4月1日から翌年3月31日まで)の予算を作ります。
予算は、款・項・目・節に分かれていて、それぞれ使い道が決まっています。
ここのお金が余っているから、他の所で使ってもいい、ということにはなりません。
ちょっと前に会計検査院に指摘された不正経理問題は、「○○に使うためのお金」を「△△の目的」に使ってしまった、というものでした。
もちろん、2つとも個人のためではなく、お役所のために使ったお金です。
身近な例でいうと「みんなで読む本を買うために貰ったお金」を「みんなで食べるお菓子を買うために使ってしまった」ようなものですね。
みんなのために使っているので、使った人には悪いことをしている、という意識はありません。
もちろん、悪いことだという意識がないのも問題ですが。*2
プール金が増えると、そのうち自分のために使う人も出てくるでしょうしね。



私になりに、改善策を考えてみました。
1つ、節約したら予算が減るのではなく、いいこと*3が起こるようにすること。
2つ、もっと柔軟に予算を使えるようにすること。
はっきり言って、地方に交付金補助金じゃない自由に使える金をもっと寄こせ!ということですね(笑)
自由に使えるお金がもっとあれば、裏金なんて作る必要もありませんから。
これだけで、裏金及び無駄遣いはけっこう減ると思うのですが、そうもいかないのがお役所でして……。

*1:というかプール金

*2:だから会計検査院に指摘された訳で。

*3:例えば、節約した分の1割でもいいから、翌年度に自由に使えるようにする等。