『道具屋殺人事件』

道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳  [ミステリー・リーグ]

道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳 [ミステリー・リーグ]

愛川晶さんによる落語ミステリーです。
私は第2弾の『芝浜謎解』から読んでしまったのですが、どちらにしても、とても興味深い内容でした。
この作者さん、昔から落語が好きで、ずっと落語ミステリーを書いてみたかったそうです。
曰く「昨今の落語ブームに乗れば出版してくれる奇特な所もあるかも知れない」ということで、急遽書き上げた、とのことですが、けっこう完成度は高いと思います。
特に、落語界のことを非常に分かりやすく説明してくれているので、私のような落語のらの字も知らないような人間でも、何となく理解した気にさせてくれるところが良いです。
残念ながら地方在住なので、気軽に寄席に行ってみようか、という訳にはいきませんが、ポッドキャストで落語を配信していたはずだから、それくらいは聞いてみようか?と思ってしまいました。


落語の噺に絡めて事件が起きてそれを解決、というお話は他にもあると思うのですが、本作のひと味違うところは、「落語の演じ方」を考える所です。
落語の最後のオチ、サゲを新たに考えるお話なんて、ちょっと噺の解釈の仕方を変えるだけで、全然違う世界が広がります。
奥の深い芸術です。
日本の伝統芸能として、末永く落語が受け継がれていくことを祈ります。