『クロック城』殺人事件

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

北山猛邦さんのデビュー作です。
彼の作品を読むのは『少年検閲官』に続いて2冊目になります。
本書を読もうと思ったきっかけも、桜庭一樹読書日記だったりしますw*1

時は、1999年7月。
太陽に非常に大きな黒点が発見され、そのせいで地球は磁気異常等の影響を受け、7月中に世界は滅亡する、と言われている世界が舞台です。
主人公の南深騎は探偵にして、ボウガンで「ゲシュタルトの欠片」と呼ばれる何か*2を破壊できる能力を持っています。
設定だけを見れば、かなりSFチック。
ある日、彼はクロック城に住んでいる瑠華という少女から、地下室に浮かび上がる顔と「スキップマン」と呼ばれるおばけのようなものを退治して欲しい、という依頼を受けます。
幼なじみの菜美とともに、瑠華の案内でクロック城に赴いた深騎は、そこで不思議な屋敷と2体の首無し死体に遭遇。
しかも、状況からいって、屋敷にいる人間全員に犯行を行うことは不可能だった……。
といった感じでした。


とにかく、人面樹やら地下室に浮かび上がる顔やらゲシュタルトの欠片やら、ホラー的要素が満載です。
しかも、出てくる死体はほとんどが首無し。
かなり怖いです。
しかし、トリック自体は、島田荘司氏の『斜め屋敷の殺人』を彷彿とさせるような、かなり「本格的」なものでした。

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)

このトリック、けっこう好きかも知れないです。
もの凄く無駄なようでいて、全く無駄がない、シンプルなトリックなのです。
トリックがとても冴えているので、はっきり言って、こんなにおどろおどろしくする必要があったのかな?と感じてしまいました。
終末思想も、別にいらないのでは?などと思ってしまった私は、救いようのない現実主義者です。
『少年検閲官』も、極めて特殊な状況下での犯罪を扱っていましたから、北山氏はこういった特殊な状況を書くのが好きなのだ、と勝手に結論付けておきます。


ちなみに、同じ系統ならば、三津田信三さんの「○○の如き○○するもの」シリーズの方がずっとホラー的要素を上手に利用していると私は思います。

*1:桜庭一樹さんはイケメン嫌いなので、北山猛邦さんの作品を避けている、といったお話だったかと思います。著者近影を見たら、本当にイケメンだ!

*2:幻のようなもの?