『スリーピング・ドール』

スリーピング・ドール

スリーピング・ドール

ボーン・コレクター』から始まるリンカーン・ライムシリーズでおなじみ、ジェフリー・ディーヴァーさんの最新作です。
本作は、リンカーン・ライムシリーズ邦訳最新作『ウォッチ・メイカー』に出てきたキネシクス(証人・被告人などインタビューの対象者の心理を読み、嘘を見破り、必要な証言を引き出す技術)の達人、キャサリン・ダンスが主人公です。
今後、新しいシリーズになるのでしょうか?


そんな美貌の「人間嘘発見器」と対決するのは、8年前にカルト集団を率い、裕福な一家をほぼ皆殺しにした、人間をコントロールする天才、ダニエル・ペル。
彼は、数年前に起こした他の殺人事件への関与を疑われ、裁判所に尋問を受けに来ていたところ、隙をついて脱走。
そこから、数日間にわたる逃走劇が始まります。
捜査を進めるダンスのチームは、8年前の一家惨殺事件の唯一の生き残り、「スリーピング・ドール」と呼ばれる少女が鍵を握っていると考え、彼女を捜し出そうとするのですが……。


本書の魅力は、何と言っても息詰まる心理戦です。
リンカーン・ライムはほんの些細な物的証拠から犯人にたどり着きますが、キャサリン・ダンスは人間の些細な仕草や言葉から犯人に迫ります。
緻密な微細証拠物件の分析も良いけれど、人間心理も興味深いものがあります。
また、あと一歩で捕まってたのに!といったニアミスも相変わらず絶妙なさじ加減でした。
更に、何度も事件の真相=見え方変わるどんでん返しも健在。
個人的には、あまりどんでん返されるのは好きではないのですが、ディーヴァーの作品では、どんでん返しが魅力の1つですからね……。


読み始めたら止まらない、面白いお話でした。
カルト集団は怖いです。
世の中には、人を容易に支配してしまうような人間が存在するのですね。