『雨にもまけず粗茶一服』

雨にもまけず粗茶一服〈上〉 (ピュアフル文庫)

雨にもまけず粗茶一服〈上〉 (ピュアフル文庫)

雨にもまけず粗茶一服〈下〉 (ピュアフル文庫)

雨にもまけず粗茶一服〈下〉 (ピュアフル文庫)

東京にあるお茶の家元(でも弱小)の跡継ぎの男の子が、大学受験をすっぽかしてライブに行っていたことが親にばれ、京都のお寺に修行に出すぞ、と怒られたため家出。
東京ですべき事があるから京都なんて行きたくない、と思って家出したのに、何故か世話になっていた親友に京都に連れて行かれて、そのまま成り行きで京都で暮らすことに。
そこで彼は、お菓子作りが趣味な寺の住職や、お茶命でおしゃべり好きの不動産屋の若者や、直衣姿で公家気取りの高校教師など、とにかく変な人たちと友達になり、更に京都にある同じ系列のお茶の宗家(こちらは全国に十万人も弟子のいる立派なところ)の跡継ぎ問題に巻き込まれたりしながら、自分が将来やりたいこと、自分の生き方を考え、少しずつ成長していく、というお話でした
青春です。
上巻の、主人公がまだ東京にいるうちは、彼がとにかく無責任で無鉄砲でイライラするし、話のテンポもあまり良くないしで、ちょっと読みづらかったのですが、主人公が京都に行って、とりあえずの落ち着き先を決めたあたりからは、個性的なキャラがこれでもかと出てきて、だいぶ読みやすくなりました。


彼は、「家がお茶の家元だなんて恥ずかしい」と思っていて、友人にもそのことを隠しています。
お茶から逃げるために家出したはずなのに、京都に行っても、お世話になる家がお茶の先生で、結局お茶から逃げられないところが、笑えます。
京都でも、最初はお茶のことは何もわからない、と周りの人に言います。
ところが、お茶会に参加させられて、いきなりお茶を立てれと言われて、無意識のうちにきちんと作法通りにやってしまい、そのことが直接の原因ではないものの、結局は家元の息子だとばれてしまうのでした。
そこらへんの、主人公の悪あがきが、このお話の見物ですね。


私は、お茶生け花お琴など、日本っぽいことが全然できないので、小さい頃から息をするようにお茶を習ってきた主人公が羨ましいです。
日本の文化は、何だかんだいって、伝統があって美しいです。
京都に行きたくなりました。