『儚い羊たちの祝宴』

儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴

米澤穂信さんの作品です。
帯に「ラスト一行の衝撃にこだわり抜いた、暗黒連作ミステリ」と書いてあって、暗黒は嫌だけれど、ラスト一行の衝撃は味わってみたい、と思い図書館から借りてきました。
装丁も、真っ黒でゴシックホラーな感じです。


収録作は、
・身内に不幸がありまして
・北の館の罪人
・山荘秘聞
・玉野五十鈴の誉れ
儚い羊たちの祝宴(書き下ろし)
の5作。
お金持ちの家もしくは別荘が舞台で、語り手はその使用人かお嬢様、という設定が多いです。
そして、全てのお話に「バベルの会」という、大学の読書サークル(会員は良家の子女限定)が出てきます。


全体的な雰囲気は、ポーや乙一を彷彿とさせる、黒い感じでした。
肝心の「ラスト一行の衝撃」の方は、微妙です。
私が考える「終盤のどんでん返し」の傑作は、文句なしに我孫子武丸さんの『殺戮に至る病』*1もしくは歌野晶午さんの『葉桜の季節に君を想うということ』*2なので、それらと比べる方が間違っているかも知れませんが……。
確かに、最後の1行はドキンとするような文章なのですが、その前から「あ、これはこういうオチだな!」と匂わせるような表現がけっこうあったりして、私はそこまで驚けませんでした。
振り返れば、随分遠くまで来たものだ……。


一番気に入ったのは、3番目の「山荘秘聞」でした。
やっぱり、ハッピーエンドの方がいいですよ。
「身内に不幸がありまして」も、懐かしい推理小説のタイトルが出てきたり、昔の推理小説の常套手段が使われたりして、楽しめました。
バカらしさも、ミステリの醍醐味の1つです。

*1:気持ち悪いけど読んで良かった!と心から言える名作です

*2:かなりの力業で、あまり好きではないのですが