『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

実はまだまだ続いている、桜庭一樹強化月間です。
少女には向かない職業』と同じく、中学生女子が主人公。
このくらいの年代って、子供でもなくて大人でもない、不思議な年頃ですよね……。
ちなみに、この本の登場人物で、藻屑ちゃんという子がいるのですが、最近、少女マンガとかで、突拍子もない名前の登場人物がいるじゃないですか。
てっきり、そういったノリで藻屑ちゃんなのかと思っていたら、本文1ページ目で、彼女の名前を見た主人公が「これはとんでもない名前だ」と思うシーンがあって、少しだけ、この本を見くびっていたなと反省し、姿勢を正して読み始めたのでした。


舞台は、鳥取県境港市
13歳、中学2年生の山田なぎさは、9月のある日、自分のことを人魚だと主張する奇妙な転校生、海野藻屑と出会います。
彼女の父親は、一昔前に有名だったミュージシャン。
彼女自身も、かなりの美少女なのに、変。そして、ちらりと見えた彼女の細い太股には、沢山の痣が……。
なぎさは、最初はこの奇妙な転校生に対して、無関心を通そうとするのですが、何故か懐かれて、一緒に行動するようになります。
そのうち、彼女の家庭の問題が見えてきて……。
といった感じのお話でした。


何だか、読んでいて、凄く悲しくなりました。
この本のエッセンスは、たぶん、本文を引用すると、
「子供はみんな兵士で、この世は生き残りゲーム」という一文なのかな、と感じました。
そして、「子供は親を選べない」というのも、肝に銘じなければ……と決意した次第。
私は、まだまだ子供を持つことはないと思いますが。
この物語での救いは、意外と少し暑苦しい山田なぎさの担任教師かも知れません。
引きこもり貴族のお兄ちゃんも素敵です。


この本は、珍しく文庫→単行本で出版されました。
桜庭さんの後書きを読みながら、ああ、これが『七竈』や『私の男』に繋がっているのか!と妙に感動してしまいました。
本当に、不思議な話です。
沢山の人に読んで欲しいです。