『町長選挙』
- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/03/10
- メディア: 文庫
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奥田英郎さんによる、トンデモ精神科医伊良部シリーズ第3作です。
『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』に続いて、伊良部が傍若無人に大活躍w
伊良部の指示により、問答無用で注射を打つ看護士マユミちゃんも、どんどん良いキャラになっていきます。
注射嫌いの私から言わせれば、こんな精神科には絶対行きたくない!
本作は、短編4作が収録されています。
死ぬのが怖くてパニック障害を起こし、夜も眠れない78歳の新聞社会長兼プロ野球オーナー*1、
無駄を省きすぎて平仮名記憶喪失になったITベンチャー企業社長*2、
太ることと歳を取ることを恐れるあまり、所構わず運動してしまう44歳の女優*3、
そして、表題作の町長選挙*4のお話、
という、非常に濃いラインナップでした。
中でも、「町長選挙」が凄かったです。
舞台は、一応東京都に属する離島で、主人公はその島に派遣されてきた東京都の若手職員です。
彼が赴任した島ですが、4年に1度の町長選挙を控え、何故か人間関係が真っ二つに割れていました。
現職町長派vs元町長派の、仁義なき戦いです。
何しろ、負けた方は4年間閑職に追いやられ、冷や飯を食うことになるのです。
生活がかかっているのだから、負けられません。
「クリーンな選挙を!」という選管のポスターも完全に意味なし。
貴重な1票だということで、両陣営から目を付けられる主人公。
公職選挙法完全無視の強引な勧誘手段*5に、すっかり胃を痛めてしまいました。
そんな中、2ヶ月の任期付きで東京から島の診療所に赴任してきたのが、伊良部でした。
お祭りの最中に飛び込んだ伊良部が大人しくしているわけもなく、気がつけば老人介護施設の誘致をエサに両陣営から「顧問料」を山と積まれるわ、選挙の勝敗を握る老人クラブは見方に付けるわ、とにかく大活躍。
熾烈を極める選挙戦の中で、両陣営はついに決着を付けるべく、何年も前に封印したある儀式をやることに……。
といった話でした。
もう、メチャクチャw
公選法では、町長選挙の運動期間って、5日間しかない*6のにな……と思いましたが、フィクションだし楽しいから別にいいや!
やっぱりこのシリーズは最高です。