『埋み火』

埋み火

埋み火

日明恩(たちもり めぐみ)さんによる、22歳の消防士が主人公のシリーズ2作目です。
ちなみに、前作は『鎮火報』という題名で、分厚いけれど読み応え十分でした。


さて。
本作の主人公は、売り言葉に買い言葉で消防士になったものの、できるだけ早く危険な現場とはおさらばして、9時5時で勤務できる事務職になりたい……とことあるごとに思っています。
それだけ書くと、非常に駄目な消防士のように見えますが、そんなことはなくて、意外と熱血漢だし、仕事は真面目にこなします。
そんな彼が遭遇したのが、連続高齢者世帯失火事件でした。
東京都北区赤羽周辺で、立て続けに老人世帯が火事になって、住人が死亡する事件が起きます。原因は、ことごとく失火であるとされました。
被害者を助けられなかったことを悔やむ主人公ですが、勤務明けに問題の現場に立ち寄った際に、違和感を感じます。
これは、本当に失火なのか?
調査を始めたところ、一連の事件には、ある共通点が。それは一体……?というのが、本筋です。
その他に、主人公の親友が勤める工務店で、建築中の物件が放火される、という事件も、多少絡んできます。


地の文は全て、主人公の青年の視点なのですが、とにかく語り口が軽妙で上手で、吸引力バツグンです。
扱うテーマは、とっても重いのですが、主人公の軽い口調で多少は軽減されていると思います。
特に、最後の方なんて、思わず涙ぐんでしまいました。
一歩引いてみたら、青臭くて、偽善っぽくて、何この人理想論言ってるの?って感じの台詞もあったりするのですが、どっぷり浸って読むと、それがとても心地よかったり。
本当に「語り」が上手で、宮部みゆきさんみたいです。
ミステリ的要素はあまりないですが、続編が出たら、また読みたいです。
それにしても、あんなことで火事になるのでしょうか?
電化製品の配線には気をつけないと(-_-)