『夜は短し歩けよ乙女』

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

『Sweet Blue Age』というアンソロジーで、「第1章 夜は短し歩けよ乙女」を試しに読んでみて、面白かったので文庫を買ったのですが、いつでも読めると思って安心してしまい、しばらく放置……。
この度、やっと読みました(笑)


端的に感想を言うと、角川の特集サイトの記述通り、最高にキュートでポップなラブストーリーです。
それも、情熱的!とかロマンティック!というのではなく、ほのぼの系。
同じ部活の後輩「黒髪の乙女」に一目惚れした主人公である「先輩」が、京都の町を縦横無尽に駆け抜けて彼女との偶然の出逢いを量産する様は、涙を誘います。
黒髪の乙女よ、いい加減気づいてあげなさい!と心の中で叫ぶこと必至です。
私は、こういう外堀を埋めるのに余念のない(というか決定的な一歩を踏み出せない)男性って、けっこう好きかも知れません。
見ていて面白そうだしw
何しろ、黒髪の乙女の後ろ姿を探し求めて歩き回るたび、主人公は酷い目に遭うのです。
巻き込まれ型の苦労人です。
一方の黒髪の乙女は、とにかくキュート!かなり鈍感ですが……。


本書を読んでいる間、森見登美彦さんは凄いなぁ、と何度も心の中で呟きました。
彼の手に掛かれば、木屋町の夜には幻想的な3階建の車が出現し(その中では偽電気ブランの飲み比べ大会が実施されている)、真夏の古本市には古本市の神様が現れて不心得な収集家の元から自慢のコレクションを奪い、秋の学園祭には韋駄天こたつとゲリラ劇「偏屈王」が跳梁跋扈し、冬の京都の町にはクリスマスムードも吹き飛ばす風邪が大流行するのです。
まさにマジックです。
まあ、森見マジックが少々強烈すぎて、最後の方は少々疲れてしまいましたが。


個人的に最も気になったのは、学園祭で出てくる「四半世紀の孤独」という討論会でした。
生まれてから1度も彼女がいたことのない25歳以上の男性が、女性とのつきあい方を徹底的に語り合う、という内容らしいです。
……不毛だ!