『ワーキング・ホリデー』

ワーキング・ホリデー

ワーキング・ホリデー

元ヤンでホストをやっている大和の前に、ある日、自分の息子だと名乗る男の子・進が現れます。
そこから始まる、2人の一夏の共同生活を描いた作品です。
客を殴ってしまったことからホストクラブをクビになってしまう大和ですが、店のオーナーのジャスミン(黒いパンツスーツとつけまつげがトレードマークのおかまさん)は、新規開店の運送会社の仕事を紹介してくれます。
新しい仕事、そして、突然目の前に現れた10歳になる息子。
果たして大和は、どんな夏を過ごすことになるのでしょうか……?


とにかく、読んでいてほんわかする作品でした。
ヘヴィな話を読んで疲れた時にお勧めの1冊です。
「突然現れた息子と戸惑う父親」という設定はありがちですが、その分、安定感がある仕上がりになっていると思います。
新米パパ大和と小学生男子なのに主婦っぽい進の関係が、読んでいて微笑ましいこと。
出てくるキャラクタも、それぞれ個性的で、いい人ばかりでした。
特に、ホストクラブ関係の人々が凄いです。
ジャスミンもそうですが、生まれながらの王子様体質の先輩ホスト雪夜や、その客のナナちゃんも、いい味出してました。
癒されたいときに安心して読める、ハートウォーミングストーリーです。
逆に言えば、全く棘がない作品なので、印象が薄くなってしまうことは否めません。
私のミステリ脳は、少なくとも2パターンほど、違う展開を考えてしまいました。
あれをああすれば、もっと波瀾万丈なミステリになるのに……残念。