『収穫祭』

収穫祭

収穫祭

西澤保彦さんの、分厚い長編です。
何というか、久しぶりに読書した!と実感できる、読み応えのある作品でした。


ある村の住人が14人、惨殺される事件が起きます。
事件が起こった地区は、村の他の地区と川で隔てられており、事件当時、台風のせいで川に掛かった橋は2本とも崩壊していました。
生き残ったのは、3人の中学生と、彼らが通う学校の教師1人。
犯人は、隣町の英会話教室で講師をしていたアメリカ人男性だとされていました。
それから9年後、事件の真相を調査するため、1人のフリーライターが動き出します。
そこで、再び同じような手口の連続殺人事件が起きるのです。
犯人は捕まったはずではなかったのか?
果たして、事件の真相とは……?
といった感じでした。


発端となった事件の描写が、はっきりいってグロいです。
とにかく死体が沢山出てきて、それのほとんどが喉をかき切られているので、血まみれです。
台風も相まって、かなり凄惨な雰囲気でした。
しかし、それでもサクッと読めてしまうのが、西澤保彦作品の不思議なところです。
登場人物達が、頭の中で仮説を組み立てては検討して崩し、また新しい仮説を組み立て……というロジックも相変わらず健在でした。
9年後に再び起きた連続殺人事件の真相も、少し強引な所はなきにしもあらずでしたが、全体としてはとても面白い作品だったと思います。
長〜い物語を読んだ末、最後の最後で分かる犯人とその境遇については、少しだけ殊能氏の『黒い仏』を読んだときのようなショックを受けてしまいましたが、まあ、あり……ではないかと。


それにしても、人間の醜いところ、黒いところ、特殊な性癖等、思わず目を背けて見なかったことにしたいダークサイドを書かせたら、西澤保彦さんの右に出る人はいないのでは?