『悪女について』

悪女について (新潮文庫)

悪女について (新潮文庫)

○『悪女について』

某ブログさんにて大絶賛だったので、俄然気になって図書館から借りてきました。
有吉佐和子さんを読むのは、初めてです。

気になる本の中身ですが、謎の自殺を遂げた女性実業家の人生を、27人のインタビューを通して描き出す、というものです。
多くの会社を経営し、日本橋に自社ビルまで建て、人生の絶頂にあったはずの彼女は、何故死んだのか?
自殺か、他殺か、それとも事故死か……?
事件の謎を追う記者は、生前の彼女を知っていた人・彼女の周りにいた人々などに、次々と話を聞いていくのですが、それぞれの話から浮かび上がってくる彼女の姿は、それこそ千差万別。
ある人は「あんなに純粋な人はいない」と言い、ある人は「希代の悪女だった」と証言する人が出てきます。
それぞれのインタビューを読んでいると、彼女が平然と幾つもの嘘をついていたことが分かってきて、読んでいる人間は混乱すること必至です。
一体、どれが彼女の本当の顔だったのでしょうか……?


本書において、最も特徴的なのは、物語の主人公であるべき女性実業家・富小路公子本人は、全く登場しないことです。
全ては、証言者の視点というフィルタを通して語られます。
それなのに、不思議と彼女の姿が生き生きと頭の中に浮かぶのです。
1人のとんでもない女性と、27人もの人間を書き上げた有吉佐和子さんの技量に脱帽です。
いや、本当に富小路公子という女性は、とんでもないですよ。
私にも彼女の100分の1でもバイタリティーがあれば……と思ってしまいます。
同時進行で色んなことやり過ぎです。
現実にあんなことをやったら、途中で絶対ボロを出してしまうと思うのですが、如何でしょうかね?