『退出ゲーム』

退出ゲーム

退出ゲーム

各方面で評価が高いようなので、図書館で見つけて即ゲットしました。
初野晴さんの作品です。
ジャンル的には、青春学園ミステリになります。


主人公・穂村チカは、高校1年生で、弱小吹奏楽部でフルートを吹いています。
彼女には、幼なじみがいて、彼の名前はハルタ。女の子が望む全ての要素*1を持った男の子。
同じく吹奏楽部でホルンを吹く名(?)探偵です。
物語は、彼の学校で起こった事件を解いてゆく、連作短編集になっています。
「結晶泥棒」は、化学部の展示物である硫酸銅が盗まれ、文化祭中止を回避したいチカが、訳あって引きこもり中のハルタを引っ張り出して事件を解決してもらう、というお話。
「クロスキューブ」は、実力派オーボエ奏者の女の子に吹奏楽部に入って貰うため、6面全てが真っ白なルービック・キューブの謎を解くお話。
「退出ゲーム」は、またしても吹奏楽部の部員を獲得するため、演劇部と即興劇で対決するお話。
最後の「エレファンツ・ブレス」は、発明部の兄弟が作って密売した「好きな夢を見られる枕」の買い手探しが、思わぬ人助け(?)へと発展するお話。最初はお気楽コメディ展開だったのに、幻の色「エレファンツ・ブレス」が出てきたあたりから急にシリアスになって、最後は社会派っぽい予想外の終わり方でした。


皆さん感想で書かれていることですが、私も表題作の「退出ゲーム」が一番面白かったです。
演劇部の部員を賭けて、お題でに出されたシチュエーションで即興劇を行い、「どちらが先に舞台から退出できるか(させるか)」を競うゲームなのですが、これ、現実にやってもかなり面白いのではないかと思います。
発想力の良いトレーニングになりそうです。
ちなみに、最初のお題が「恩師の送別会にて、恩師の最後の挨拶前に退出する」で、次のお題が「時効15分前の潜伏先アパートから退出する」でした。
2番目のお題が、非常に興味深かったですね。
まさに、本格ミステリ的。
読者の盲点を突くお手本のような展開でした。
しかも、そのお題から現代中国の抱えるある「問題制度」にまで言及してしまうのですから……。


主人公コンビの、しっかり者の女の子×ちょっと抜けた男の子という設定が、まさに最近の小説って感じです。
キャラの濃い周りの人々や、ちょっと奇妙な三角関係(?)にも注目です。
しかし、個人的には、もう少し三角関係を生かして欲しかった……と思うところです。
BL的展開を期待させておいて実は……!!みたいなのがあると、嬉しいかも知れません。
本作品、いい感じでキャラの立った登場人物が多く、読んでいて楽しいし、まだ言及されていない謎もあるので、是非シリーズ化して欲しいですね。
初野晴さん、要チェックです。

*1:サラサラの髪、きめの細かい肌、華奢な体、中世的な顔立ち、二重まぶた等